「石原慎太郎と都知事の椅子 / 神 一行」の感想・あらすじ
2024/02/02
目次
点数
73点
感想
2000年に発売されたかなり古い本だが、前半は「歴代の都知事についての解説」「東京23区と他の市町村との違い」など、そこそこためになる内容だった。
しかし、後半は都庁の組織や人事のルールの説明など退屈な内容が多かった。
第1章:東京都知事という座の権力
- 都知事は直接選挙で選ばれるため権力が強い。
総理よりも国会が優位に置かれているのに対し、都知事は都議会よりも優位に置かれている。
第2章:都知事の椅子に座った男たち
初代:安井誠一郎
- 内務省官僚から官選知事となり、昭和22年の第1回都知事選で勝利し公選知事となった。
- 戦災焦土を整備する費用がなく河川に埋めたため、水上交通手段を失うともに河川氾濫を招いた。
- 昭和22年3月に35区から23区に整理した。
- その後、2度の都知事選に勝利し3期12年知事を務めた。
- 政治家というより官僚だったため長期的な計画性に欠け、都政を汚職と腐敗だらけの利権の巣窟としてしまった。
第2代:東龍太郎
- 東大医学部教授などの経験をもち政治にはまったくの素人だったが、学生時代はボート部の選手であり、IOC委員を務めていたので東京五輪の推進者として岸信介政権から知事として送り込まれた。
- 社会党推薦の有田八郎との選挙戦は有田夫人を誹謗する文書が出回るなど泥沼選挙となり、この選挙戦を書いた三島由紀夫の小説「宴のあと」は日本初のプライバシー裁判となった。
- 2期8年続いた東都政の実務面は、筆頭副知事の鈴木俊一に任されていた。
- 高速道路、地下鉄、高層ビルなどを建設した五輪事業により、赤字財政となった。
- 2期目の任期中には都議会議員の汚職事件や水不足などがあり都民の怒りが爆発、政府が特例法を作って都議会を解散させると、自民党都議は大敗北し社会党が第1党となった。
- 東は任期満了まで知事を続けたが、野党優勢のなかでは三戦の声も上がらず退陣した。
第3代:美濃部亮吉
- 父は有名な法学者、母の父は東大総長や文部大臣を務めるなどエリート一家に生まれ、自身も東大経済学部を卒業して法政大学や東京教育大学教授などを務めた。
- 昭和42年の知事選で社会・共産党推薦として当選、3期12年知事を務めた。
- 美濃部は「主人公は都民である」と宣言し、物価高問題、ゴミ戦争、都営ギャンブル廃止、などの改革を行った。
- 革新知事だったため保守政権の自治省と対立、美濃部都政末期には、ドルショック、オイルショックにより高度成長が終わり、地価・物価の高騰により税収が減少し約1,000億円の赤字を遺した。
第3章:鈴木独裁政権が遺した功と罪
- 昭和42年の知事選で当選し第3代都知事となったのが鈴木俊一である。
- 東大法学部から内務省官僚となり、岸内閣の官房副長官、東都政の副知事などを務めた。
- 自民党からの都知事選出馬要請を「勝算なし」と3度断ったが、4度目の要請で出馬した。
- 知事となった鈴木は管理職や退職金、都職員の削減などを断行し、3年目に都財政を黒字に回復させた。
- 都庁を有楽町から新宿に移転させ、跡地には東京国際フォーラムが建設された。
- 臨海副都心開発では世界都市博覧会の開催を目指したが、バブル崩壊による企業の進出断念や税収減があり、次の青嶋知事により世界博は中止された。
第4章:都庁の組織と運営システム
- 本庁は役割から以下のの2つに分けることができる。
- 官房系局:総務局、財務局など、情報・組織・財政を担当する。
- 事業系局:都市計画局、港湾局、主税局、福祉局など、都民に直接関わるサービス持病を分担している。
- 特別区制度という東京にしかない自治制度がしかれている。
- 一般に区というと大阪市、横浜市などの政令指定都市の中の行政区と同じものと思われがちだが、東京都の区はそれらと違って市に準じる機能を与えられている。
- 23区には多くの区職員がいて区議会や区役所をもっている、その意味では一般の市町村と変わらない。
- ところが、市とは異なり独自の財政や完全な自治権を持たない中途半端な制度におかれている。
- たとえば、上下水道、消防、バス・地下鉄、などの公営企業は都の事業となっている。
- 固定資産税、市長民政法人分などはいったん都が集めてから区に配分するようになっている、つまり独自の財政権が認められていない。
- また、他の自治体では市町村役所で足りる用が、区役所では足りずに都庁に行かなくてはならない。
- 昭和18年、戦争遂行のため統治しやすいように、東京府の中に東京市が存在していたものを東京都に統合した。
そのため、東京都には他の県と違って東京市がないのである。 - この制度で最も得をしているのは、(東京都を富裕団体としているため)地方交付税を払わなくてすむ国であり、次が調整交付金の配分により区を支配している都庁である。
第5章:副知事とブレーンの役割
- 安井知事はもともと内務官僚あり、官選知事も経験していた都政のエキスパートであった。
そのため、事務官僚的に扱われた3人の副知事はいずれも任期途中で辞任してしまった。
その後内部昇格により副知事を登用した結果、ワンマン都政となってしまった。 - 東知事は行政の素人だったため、政府与党は知事代行者として鈴木俊一を副知事に送り込んだ。
鈴木は次期知事を狙っていたが、東都政の汚職スキャンダルにより革新ブームが起こったため出馬は見送られた。 - 美濃部知事の1期目は任命した3人の副知事のうち2人が議会で否決されてしまったため、副知事は1人だけであった。
2期目以降は官房系3局長から抜擢するという、慣例に従った無難な登用となった。 - 鈴木知事は官房系3局以外の局長からも官房計3局抜擢した。
- 青嶋知事は、都市博を中止するために「推進してきた人だからこそ細かい部分にも明るい」と敢えて都市博推進派の人物を副知事にした。
- 石原知事は気心知れた腹心を副知事に任命した。