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「政治家の覚悟 / 菅 義偉」の感想・あらすじ(その1)

2024/02/03
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感想

2020年10月発売の書籍だが、7,8割は2012年に発売された書籍を再収録したものであるため、取り上げられている題材が古かった。
それでも、著者の考え方や困難な問題への取り組み方などを知ることができた。

著者は国民を第一に考えていて、その軸が常にブレていないため、政治家として素晴らしい仕事をしてくれていると思う。
官僚の融通の効かなさ、反応の鈍さを批判している一方で、官僚の能力の高さを評価していて、非常に上手に官僚を扱っているという印象を受けた。

新型コロナの影響もあり総理大臣としては世間からあまり評価されずに退陣してしまったが、個人的には著者のような政治家が増えればより良い国になっていくと思うので支持したい。

はじめに

  • 秋田の農家の長男として生まれた。
  • 高校卒業後板橋の町工場で働くもすぐに辞め、アルバイトでお金を貯め、当時私立で一番安かった法政大学に入学。
  • 大学卒業後は会社勤めをするも、26歳の時に政治に興味を持ち大学の学生課に相談、小此木彦三郎議員を紹介され秘書となる。
  • 38歳で横浜市議会議員選挙に出馬し当選、1996年47歳で衆院選に出馬して当選。
    それ以来8期連続で当選。
    総務大臣や官房長官を歴任。
    2020年9月総理大臣となる。
  • ・新型コロナ対策(Go Toキャンペーン)、デジタル庁の新設(GIGAスクール、マイナンバーカード)、地方創生(ふるさと納税、インバウンド増加策)、少子化対策(保育機関・学校無償化、待機児童対策、不妊治療への保険適用)などに取り組んできた。

第1章:政治家が方向性を示す

  • 政治家と官僚は「政治家が方向性を示し、官僚は具体的な処理案を提供する」という関係であるべき。
  • 官僚は「前例や積み重ねてきたものを大事にして変革を嫌う」「貴重な情報を組織内の溜め込んでしまう」「他の省庁に対して対抗意識があり連携しようとしない」「マスコミの自分たちへの評価を気にする」といった傾向がある。
  • 保守的で融通のきかない官僚だが、優秀で勉強家であり、海外を含めた膨大な情報に精通している。
  • 政治家は政策決定の際に官僚から過去の経緯や現状の説明を受けるが、「自身の信念」と「国民の声をいかに反映させるか」を常に反映させなければならない。
  • 責任は政治家が全て負うという姿勢を強く示すことが重要。

第2章:自らの思いを政策に

  • 第1次安倍内閣で総務大臣に就任。
  • 地方分権改革推進法案を提出し国会で成立、地方分権担当大臣が新設され著者が兼任した。
  • ふるさと納税の構想を官僚に持ちかけたところ「受益者負担の原則に反する」「ふるさととはどこを指すのですか」とできない理由ばかり並べて反対された。
    著者は「都会の住民が旅行先で捨てたゴミの処理費用は誰が払うんだ?」「その人にふるさとと思う地域ならばどこでもいい。年度によって違っても構わない」と言い「絶対にやる、そのための研究会を立ち上げる」と決意を示した。
    官僚というのは前例のない事柄に対して初めは反対するが、面白いもので、やると決まると一転して強力な味方になる。
    その後、議論・検討が繰り返された後国会に提出され、2008年4月に成立した。
  • 例えばA市は企業誘致や地場産業の努力をして税収が増え、B市は何もせず税収が減ったとする。
    すると、A市は地方交付税が減りB市は増える。
    このような仕組みでは自治体が努力しなくなってしまう。

    著者は「頑張る地方応援プログラム」を創設し、地域活性化策に取り組む市町村に地方交付税を上乗せ配分するようにした。
  • 2007年度の法人事業税と法人住民税は、東京都が約1兆8千万円であったのに対し、島根県・和歌山県などの下位8県の合計は約2千億円であった。
    著者は官僚に「東京の税収を地方に移す方法はないか」と聞いたが「無理です」という回答だった。
    しかし検討するように指示したところ「いったん国税として徴収し、地方へ譲与税として分配することは可能」というプランを持ってきた。
    そして、法人事業税の約半分に相当する約2兆6千億円を「地方法人特別税」として国税化し、半分を人口で、残りの半分を従業員数で按分し都道府県に配分。
    これを地方法人特別譲与税とした。

第3章:決断し、責任を取る政治

  • 朝鮮総連が拉致問題に関係していることが明らかになっていたが、多くの地方自治体は固定資産税の減免措置をおこなっていた。
    著者はこれを見直すように自治体に通知、2005年度には減免対象となっていた団体が98件あったが、2010年度にはゼロになった。
  • 拉致被害者のための短波放送「しおかぜ」は、国内には放送するための電波がないため海外から発信していた。
    著者は官僚に国内から発信するように指示、アジア放送連合で日本へ周波数が割り当てられ、2007年3月からは国内から放送できるようになった。
  • NHK短波ラジオ国際放送に「拉致問題を放送するように」と命令したところ、マスコミは「報道への介入だ」と猛反発した。
    しかし、著者は「国家として拉致被害者救出のためにできることは全てやる」として批判されながらもNHKに命令書を交付した。
  • 近未来通信の詐欺事件では「電気通信事業法での立ち入り検査は前例がない」と躊躇していた官僚に「責任は取るから立ち入り検査をするんだ」と指示した。
    その後、電気通信事業法を改正し、利用者利益が阻害されていない場合でも、事業運営が不適切な事業者に業務改善命令を発動できるようにした。
  • 財政破綻した夕張市は、職員数が多い、観光事業などは不採算でも見直しはしない、公共施設が多い、など運営が放漫になっていた。
    著者は官僚に指示し、事態が深刻化する前に対応を取るための「地方財政健全化法」を成立させた。
  • 地方自治体が政府から借りた財政融資資金は固定金利であり、繰上償還することもできなかった。
    著者は「金利4〜8%は高すぎる。繰上償還を認めるべきだ」と官僚に指示、繰上償還が可能となった。

第4章:国民目線の改革

  • 年金記録問題は社会保険庁とそれを監督する厚労省の問題だったが、安倍総理からの依頼で総務省で対応した。
    その後、社会保険庁は解体され、日本年金機構が新たに設立された。
  • 総務省所管である平和祈念事業特別基金の新宿のオフィスは、職員21人で310坪・家賃月955万円というとんでもない無駄遣いをしていた。
    これを著者の指示で年間1,000万円の事務所に移転させた。
  • 地方の首長の退職金は知事で4,000万円、市長で2,000〜3,300万円と高額だった。
    ちなみに総理は500〜600万円だった。
    著者が首長の退職手当を総務省のホームページで公開するようしたところ減額へ転じた。
  • 被災者生活再建支援制度は住宅が全壊した世帯に最大300万円支給できるようにしたものだったが、支給を受けるのに膨大な書類が必要で、支給対象もローン利子に限定され実際には50万円程度しか支給されない状況だった。
    著者の指示により「建設費も対象とし、シンプルで使い勝手の良い制度」に改正された。

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