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「実行力 / 橋下 徹」の感想・あらすじ(その2)

2024/02/03
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判断の軸を部下に示す

「割り箸になる」と述べましたが、どちらを選択しても自分の判断基準に敵っていることが前提です。
そのためには、部下から上がってくる案は、その時点である程度リーダーの判断基準に敵っていることが大前提です。
さらに、リーダーは自分の判断基準・軸を日頃からメンバーに伝えておくことが必要です。

僕の場合は「フェア」という軸を柱の一つにしていました。
例えば、補助金の使い方であれば、特定の人だけをりすることは絶対に許しませんでした。
「フェア」を基準にした判断を繰り返すことにより、部下たちの方から、常に万人にチャンスを与える制度に仕上げて僕のとことにあげてくるようになりました。

リーダーは自らの個性・傾向を知っておくことの重要です。
僕の決定の個性は、これまでの人生の歩みによって、次のような傾向があったと思います。

  • やるorやらないか:やる
  • 大胆orまずは第一歩:大胆
  • これまでのやり方or新しいやり方:新しいやり方
  • 調和的or波風を立てる:波風を立てる
  • 体裁を気にするor気にしない:気にしない
  • 対症療法or抜本的根治的:抜本的根治的
  • 目の前の利益or長期的な利益:長期的
  • 一部の者の利益:万人の利益
  • 現役・将来世代の利益or高齢者の利益:現役・将来世代
  • 現役世代の利益or次世代の利益:次世代

部下ができないことを実行する

リーダーの仕事で重要なのは「部下ができないことを実行すること」です。
特に最初は、ちまちましたことではインパクトを与えることができないので、部下がこれまで「絶対にできない」と思っていたことを解決することにより「最初の衝撃」を与えることが重要です。
マキャベリも名著「君主論」において「統治者は最初に衝撃的な大事業を行うべき」と語っています。

大阪府知事に就任した時、府庁職員の積年の不満は「国直轄事業の地方負担金」の問題でした。
国の公共事業の費用を地方自治体が負担する仕組みのことですが、その請求書には内訳が何も書かれていませんでした。
あまりにも一方的すぎるのです。

僕はメディアを使って、国と喧嘩をする宣言をしました。
そして、1959年以降全国知事会が見直しの申し入れをしても見向きもされなかった地方負担金を、見直してくれることになりました。
不可能と思われていたことを実現したことで、府庁の職員が僕の話に聞く耳を持ってくれるようになったと思います。
これまでメンバーが絶対にできなかったことをやる、それがリーダーと部下の信頼関係の土台です。

逆張りの法則

講演などで「自身のビジョンはどうやったら作れるのでしょう?」といった質問がよく飛んできます。
僕の持論の1つは「逆張りの法則」です。
組織がうまく回っているときは、そのまま進めていけばいいだけです。
現状が悪いのであれば「それまでの方針の全否定」をやってみる価値はあります。

逆張りは、組織にとって一番嫌なことです。
自分たちのやってきたことを否定されるのですから。
ゆえに、逆張りの方針を打ち出せるのはトップだけです。

ビジョンづくり

僕は毎日、主要な新聞5紙を読み、ニュースに対して「自分はこう考える」という持論を構築する作業をしています。
単にニュース知識を頭に入れて物知りになるのではなく、課題や解決策を考え、自分お意見を付けて持論を言えるようにするのです。
これを毎日、今でもやっています。

トランプ大統領はすごい

アメリカ連邦政府の幹部職員は、大統領が人選します。
ですから、大統領が交代すると幹部職員の多くは入れ替わります。
クビになった人は、ロビー会社に就職してワシントンの中で様々な政治的調整をします。
政治家や役人に色々と働きかけを行なっているのです。

トランプ大統領は、一部の者がアメリカの政治行政を牛耳っている、とこの仕組みを問題視しました。
その既得権益をなくすために、政府職員を辞めた後のロビー活動は禁止することを選挙の公約に揚げました。
そのため、ワシントンでのトランプ大統領の評判は非常に悪く、民主党はもちろん共和党の政府職員の中にも反トランプの職員がたくさんいます。

トランプ大統領は、あそこまで政治行政システムを敵に回しながら、よく自分の考えを実行できているなと感心します。
これまで党を超えて連邦政府の方針となっていたことを次々と変えようとしています。
よほど組織を動かすための知恵と工夫がなければできないことでしょう。

トランプ大統領のシンプルな方針

トランプ大統領は6000項目くらいの規制緩和をしました。
規制緩和というのは本当に大変なんです。
規制によって業者の新規参入が困難になり、既存業者の利益が守られています。
規制緩和となると既存業者たちが一斉反発し、役所も安全や秩序を守るという理由から規制をしているため反発します。

トランプ大統領が出した指示は非常に明快です。
「1つの規制を作ったら、2つの規制を緩和しろ」これを厳格にルール化しました。

知事・市長時代の僕は、こんなことは思いつきませんでした。
トランプ大統領は明確な数字を出し「守らない場合はペナルティがつくぞ」という脅しまでしっかりやっています。

巨大組織を動かすためにはルールを明確にし、守らない場合のペナルティをしっかり科す、ということが必要不可欠です。
僕はそこまで徹底できていないところがありました。
僕が市長のときに出したある方針が守られていないことが、最近になって報道されました。そのことを考えると、トランプ大統領は本当にすごい指示を出したものだと思います。

世の中は日々動いていますので、何か問題が起きるたびに政府は規制を作らなければなりません。トランプ大統領の指示により、黙っていてもどんどん規制が緩和されていきます。

放っておいたら部下や組織が動かないようなことについて、部下や組織が具体的な行動を起こす原動力になるものが、トップの出すべき方針というものです。
放っておいたら役人は、規制緩和という面倒なことはやりません。
だからこそ、規制緩和を組織を挙げてやるようなトップの方針が必要なのです。その点で、トランプ大統領の方針の出し方は見事だと思います。

加計学園問題

日本では50年以上も獣医学部の新設が拒まれていました。
文科省が規制し、獣医師の数を増やしたくない日本獣医師政治連盟やそれを応援する政治家がバックに付いています。
そこへ加計学園が獣医学部を新設しようとして大騒動になったのです。

新設を拒む抵抗勢力の勢いはすさまじく、規制緩和を実行する側は国家戦略特区制度を活用し、総理の威光をちらつかせ、やっと規制緩和が実現したのです。
この間、数年がかかっています。

その後、国会でこの規制緩和が違法・不適切ではないかと取り上げられ、メディアも巻き込んで1年以上も大騒動となりました。
莫大な政治エネルギーと時間を費やして、実行できたのは獣医学部を1つ新設するというものだけ。
規制緩和というのはそれくらい大変なものなんです。

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