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「実行力 / 橋下 徹」の感想・あらすじ(その1)

2024/02/03
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92点

感想

物事の考え方の参考になる、とてもいい本だった。

どんな仕事でも、この本に書かれているようなことを考えながら遂行していくべきだと思う。
意外にもトランプ大統領のことを称賛しているが、確かに指示の出し方などが明確であり、それが実行され結果を出していると思う。

比較優位の思考はとてもいい考え方だと思う。

部下との人間関係なんか気にするな

人間関係を気にしすぎると、部下に「いい上司」と思われたいという気持ちが強くなってしまいます。

部下と飲みに行って話を聞いたり、相談に乗ったりすることが、一般的には関係づくりの王道とされています。それもいいのかもしれませんが、仕事で実績を上げなければ「あの上司はいい人だね」で終わってしまいます。

職場の上下関係である以上、仕事を成し遂げる関係でなければなりません。
人間関係を気にしすぎるよりも、初めから「部下との人間関係づくりは難しいもの」と思って接するほうが、気持ちが楽になると思います。組織のリーダーに必要なものは友人関係ではなく、仕事をやり遂げたことへの信頼関係です。

僕は大阪府庁でも大阪市役所でも、職員たちと散々対立しました。
「別に嫌われたっていい。死ぬわけじゃないし」と開き直っていました。
「知事を辞めたら、もう付き合わなくてもいいんだし」とドライに割り切って、人間関係を作るよりも仕事をやり遂げようと考えていました。
リーダーが仕事をする上で一番大事なことは「部下ができないこと」をやり遂げることです。

宴会王には支持が集まらない

政治家の中には宴会王と呼ばれるような人もいますが、宴会で飲み食いの時間を過ごすことが、リーダーに必要な人間関係づくりになるのか大いに疑問です。
どんな形でもいいので何か「仕事をやり遂げた」というものがないと、組織マネジメント上有効な関係にはならないでしょう。

だから宴会王政治家には、いざというときには仲間からの支持が集まらず、グループや派閥のリーダーにはなれません。
なんとなくの仲間・友人が多い、で終わってしまうのです。

どれだけ怒っても人は動かない

僕は部下を呼ぶときには「さん」づけをし、丁寧語で接していました。
年上はもちろん、年下に対しても「さん」づけです。
僕が組織の中で一番の権力を持っているわけですから、そんなところで偉そうに振舞わなくてもいいわけです。

部下に対して、こちらから喧嘩腰になったことはありません。
僕の方が部下よりも絶対的な権力を持っているのだから、わざわざ喧嘩腰になる必要はない、と思っていたからです。
いざというときには権力、すなわち人事権を行使して、飛ばしてしまえばいいだけなんですから。

もちろん「この人とは合わないから異動」ということはやっていません。
反対意見の人とも、とことん議論しましたし、人事権を行使する場合でも本人の言い分を聞いてから考えました。

「最後は人事権がある」と思って、部下をむやみに怒ったりせず、静かに対応した方がいいと思います。
若い上司が年上の部下たちを動かして組織運営する場合には、この点はとても大事だと思います。
年上の人に威張ったり怒鳴りつけたりすれば、彼らのプライドを傷つけます。
それよりも、穏やかに接して「最後は人事権を行使すればいい」と考えておいた方がいいと思います。

反対派はあえて積極的にそばにおく

組織内で猛反発を受ける案については、反対派に積極的に意見を述べさせる機会を与えるマネジメントをすべきです。
「この人が反対していたにもかかわらず、決まってしまったならば仕方がない」とメンバーが諦めてしまう反対派をそばに置いておく必要があります。

そして「決まったことには従う」という原則を組織に守ってもらうことが、反対意見を聞くための大きなポイントです。
もし反対意見を押し切ることになった場合、反対者の不満はゼロではないでしょう。
それでも反対意見を聞いたうえでの決定は、反対者の不満を和らげ、適度な修正がかかってその後の運営がうまくいくことが多いのです。

答えが出せないような難しい案件は、絶対的な正解を見つけることができません。
そのため、自分とは違う立場の人の意見を聞くことが重要になってきます。

様々な意見を聞きながら修正していき、できるだけ正解に近づけるようにしていくしかありません。
そういう意味で「イエスマンばかり置くな」というのは、一理あります。
しかし「最終的に決まったことには従う」という点を抑えていないと、意見が平行線をたどって、いつまでたっても結論が出なくなります。
それをメンバーに約束してもらうと、むしろ自分の周りに反対意見を言ってくれる人を置きたくなります。

部下を評価する際に心がけていたこと

組織にいる人は、情実人事を一番嫌がります。
情だけで人事を決めていたら、組織は動かなくなります。
巨大組織になればなおさらです。
人間関係や好き嫌いでチーム内の人事を決めていくと、そうした姿勢は必ず部下や組織に伝わりますし、本当に実行力のある組織は作れないでしょう。

僕は、自分と仲が悪いと思われている人材でも中枢ポストに就けました。
実力があれば登用する、という方針を組織に示すためでもあります。
決定したことに従ってくれるのであれば、それでOKです。

相性が悪かろうが、感情的に対立していようが、実力のある人は登用したので、職員には「実力主義の人事」と思ってもらえたと思います。
橋下におべんちゃらを言ったり、橋下と飲み食いの人間関係を作ったりしなくても、仕事さえしっかりやれば評価される、という雰囲気を作ることができたと自負しています。

組織内の人間関係は、甘い友人関係とは異なり、仕事をやり遂げる人間関係。これが実行するための人事の鉄則です。

リーダーの役目

リーダーのポストに就いたときに最初に考えることは「現場の仕事とリーダーの仕事」の仕分けです。
「リーダーはボトムアップで部下の声を吸い上げろ」という考えがありますが、部下のいうことに乗っかっているだけのトップでは意味がありません。
ボトムアップで現場の声を聞くことは否定しませんが「リーダーは現場のできないことをやるもの」「リーダーは決断、決定が主な仕事」と認識しておくことが重要です。

さらに、リーダーが現場の実務の細かなことに口出しすると、たいがい失敗します。
「これは違うんじゃないか」と口出しすると、現場から「何も知らないくせに」と思われますし、実際にリーダーは現場のことをそこまで知りません。
現場の問題点というのは、探せば山ほど出てきます。実務的な問題の解決は現場に任せればいいのです。
それよりも現場が気づいていない大きな問題点を探り出して、それについて現場と話し合いながら、最後は決断・決定をしていくことがリーダーの役目です。

課題を発見するための本や新聞の読み方

知事や市長というトップが扱う課題は、医療・教育・福祉・インフラ整備・公務員改革に至るまで多岐にわたり、現場の人たちと議論するためには学ぶべきことは数え切れません。

僕は現場の人たちの話を聞いて内容を理解し、ある程度の議論ができるくらいまでは勉強をしました。とは言っても、リーダーの勉強の仕方は、専門家の勉強の仕方とは違います。

新聞を読むにしても、知識を増やすことだけが目的ではありません。
ニュース記事を読みながら、各事象について問題点は何か、解決するためには何をどのようなプロセスで進めていけばいいのかを常に考えます。
各記事について常に持論を持つように頭の体操をしておくのです。

僕は毎日、主要な新聞5紙を読み、ニュースに対して「自分はこう考える」という持論を構築する作業をしています。
単にニュース知識を頭に入れて物知りになるのではなく、課題や解決策を考え、自分お意見を付けて持論を言えるようにするのです。
これを毎日、今でもやっています。

知事、市長時代に、僕は人生の中で一番勉強をしたと思っています。
司法試験を受けたときよりもずっと勉強しました。

正しい解を見つけ出すより、まずは決断

大阪府庁の場合、議論を重ねても決められなかった案件が上に上がっていき、最終的にトップに上がってきます。そのような案件は「右か左か本当に分からない」ものです。

僕の場合は、自分の役割は「割り箸」であり、どちらに倒れるか決めるものと割り切っていました。
その道のプロの人が散々議論しても決めることができないような案件は、裏を返せば「どちらを選択しても仕方がない」「どちらに転んでもメリットもリスクも同じ」というものであり、一個人が「絶対的に正しい」判断などできるわけがありません。

リーダーが決めたという「カタチ」「体裁」が必要なだけなんです。
リーダーは正しい決定をするというよりも、誰もが決められない問題について「決める」ということが役割なんです。

コンサルタントや学者が書いた経営書には、MECE、ロジックツリーなどのメソッド名が並び、正しい解を見つけ出す方法が延々と書いてあります。
しかし、煮詰まった案件が1日に何十件も上がってくる状況で、そんなメソッドで全ての案件を判断できるはずがありません。
彼らはリーダーが置かれている状況を知らないのです。

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