「新選組颯爽録 / 門井 慶喜」の感想・あらすじ
点数
77点
感想
新撰組の6つの短編集。
ストーリーがしっかりしていて、そこそこ面白かった。
ただし、どの話も架空の作り話といった内容で、現実味に欠けている感じがした。
土方歳三は剣術が苦手という扱いは今までにあまりなかったので、新鮮に感じた。
あらすじ
馬術師範
安富才助は入隊して7ヶ月しか経っていないにも関わらず、馬術師範に任ぜられた。
それを快く思っていなかった阿部十郎が道場で安富を倒したことで、安富の評判は地に落ちた。
近藤勇は二条城へ騎馬で登場するために、そんな安富の馬術の生徒になった。
しかし、阿部の土方への進言により安富は勘定方へ異動となってしまう。
阿部は砲術師範であったため、馬術師範だった安富を妬んでいたのである。
阿部は攘夷思想の持ち主であり、攘夷派の敵となった新撰組から一度脱退していたが、御陵衛士になるために再度脱退した。
その後、近藤は阿部らに狙撃されたが、馬術訓練のおかげで落馬せずに逃げることができた。
鳥羽伏見の戦いで阿部は安富に切りかかったが、安富は走ってきた空馬に飛び乗ると阿部に一太刀を浴びせて大阪へ逃げ延びた。
芹沢鴨の暗殺
芹沢鴨の横暴と暗殺されるまでが描かれている。
密偵の天才
ある日、新撰組は指名手配中の男を捕まえたが、近藤勇は似顔絵とは別人であるとして釈放してしまった。
男は陸援隊の村山謙吉と名乗っていた。
村山は陸援隊に帰陣し中岡慎太郎らと食事をした。その席で高落喜三郎という男が「村山君は新撰組の間者なのかも」と言ったが、村山は笑い飛ばした。
しかし、それは当たっていた。
2日後、水野八郎という陸援隊の隊士に「間者である」ことがバレていることに気づいた村山だったが、なんと水野も御陵衛士の間者であった。
しかも水野はかつて橋本皆助という名前で新撰組に在籍していたという。
しかし、実は水野は新撰組の間者で、御陵衛士に潜り込み、さらに陸援隊に潜り込んでいた。
その後なんだかんだあり、村山は陸援隊に間者であることがバレたが、水野は幕府を見限り陸援隊に正式に加入、維新後は陸軍軍曹になった。
よわむし歳三
土方歳三は人を組織して動かす才能には長けていたが、剣術の才能はなかった。
京に上った後の芹沢鴨やその他の暗殺に関わっていなかったため、土方は「隊士たちにしめしがつかぬ」と思っていた。
池田屋事件の日、土方は面積が広く店の数が多い鴨川東岸組の隊長に自ら願い出た。
しかし、敵の浪士たちが潜伏していたのは鴨川西岸にある池田屋であった。
新撰組の事務官
肥後熊本藩で国学を学んでいた尾形俊太郎は、剣術ができないため文吏として新撰組に給金目当てで入隊した。
尾形は入隊後、京都で浪士組を結成してすぐの頃に、殿内義雄という文吏が近藤勇に殺されていたことを知る。
その理由は「学問だけの人間は行動する前に考えてしまう、それが他人に伝染し隊を腐らせてしまう」というものであった。
その後、文吏としても優秀な武田観柳斎が入隊すると、尾形はいつか自分が不要になって殿内のように殺されるのではないかと不安に思う。
ある日近藤に呼ばれた尾形は「武田は弁済があり他の隊士を毒しかねない。武田はいずれ長州に寝返る」と話し、武田を殺すように命じられる。
毎日日誌に隊内の出来事を書いていた尾形は、かつて武田が誤認逮捕した矢野玄道という国学者が勤王派の公家と密接な関係であることを武田に告げた。
すると武田は矢野と密会するようになったため、近藤は宴会の帰り道の武田を斎藤一らに殺害させた。
ざんこく総司
沖田総司は京に上る前、山南敬助と兄弟のように仲が良かった。
山南は京での警邏中に強盗を惨殺したが、左肘を切られたため剣術が弱くなってしまった。
その後、山南は部屋に閉じ籠るようになり、近藤に総長の役職を免じるように伝えた。
しかし、無役に落とされた山南は屈辱を受けたとして置き手紙を残して失踪、沖田に連れ戻されて切腹した。