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点数
62点
感想
自分にとっては少し難しい内容だった。
いろいろな国の話が出てきて、結論がなく、何が言いたいのかわからないものが多かった。
なんとなくだが、「資本主義は格差を生むため、社会主義的な考えを取り入れる必要がある。ただし、ソ連のように国が全てを管理してしまう完全な社会主義は人々の自由を奪ってしまうのでダメ」ということは理解できた。
資本主義と格差
マルクスの考える資本主義では労働力は商品であり、人間の労働力が売買されて人間が人間性を失ってしまう。
封建社会が崩壊し資本主義社会になり、資本家が労働者よりも金儲けを優先したことで格差がどんどん広がってしまった。
イギリスで資本主義が始まった当初は国内の格差が広がったが、植民地支配により国外から利益を得たことで国内の格差が緩和された。
ただし、今度は国内と国外で格差が生じた。
このように資本主義というのは、放っておくと格差を作り出すものである。
後期資本主義
70年代にはすでに資本主義の行き詰まりに関して議論されていた。
当時の欧米の資本主義国は、経済が停滞していたため資本を東欧の社会主義国に貸し付け、巨大な市場と労働力を得た。
これにより経済停滞から脱却することができた。
新自由主義
70年代以降、欧米では累進課税の税率を引き下げたことで、資本家と労働者の格差が広がった。
アメリカではレーガン政権時代に高い利子率政策(年利17%くらい)を行い、世界の資金を集めて軍事産業などに投資した。
規制緩和と高い利子率誘導により資金を集めて、経済停滞を打破する政策を「新自由主義」と言う。
国家権力の介入する社会主義
社会主義は、資本主義化の矛盾や限界に挑む試みだったという見方もできる。
1830年代にヨーロッパでコレラが流行した際、民主主義的にコレラの伝播を防ぐことはできないため、国家が検疫を実行する必要があった。
このことは、国家が安全を確保すると貿易の自由がなくなり、貿易の自由を認めると伝染病を予防できない、と言うことを意味している。
1840年代になると、国家権力の介入する社会主義の思想が全面に出てくるようになった。
自由主義的な社会主義
強力な国家権力の関与を前提とするのではなく、民主主義を前提にして、人々の自由な運営によって実現しようという社会主義もあった。
ブルードンらが考えたこの自由主義的な社会主義は、1850年代にもう一度コレラが流行したことで力を失っていった。
コレラが接触感染であることが判明し、国家権力による検疫システムが生まれたためである。
そして、国家主義的な社会主義の国ができた。それが1917年のロシア革命によって誕生したソ連である。
社会主義国が崩壊した原因
社会主義国は自ら崩壊したのではなく、米ソのデタントの影響で資本主義国から社会主義国に大量の貸し付けが行われ、それを返せずに崩壊した。
市場拡大を図った資本主義国によって、社会主義国は資本主義的世界市場に組み込まれていったのである。
社会保障制度
いま存在している資本主義には社会主義がモデルとなったシステムがたくさん入っている。
医療保険や年金などの社会保障制度である。
消費の変化
コロナ禍でネクタイ、化粧品、香水は売れなくなった。
これらはコロナ禍の終息後も消費は戻ってこないかもしれない。
消費過少問題
ケインズは過剰生産の解決策として公共事業をやればいいと考えた。
しかし、コロナ禍終息後のような消費過少の状態ではこの対策は成り立たなくなる。
今までは人口が増えることで消費が増えてきたが、人口増が止まると消費は増えない。
過少消費の問題はいずれは人口問題として出てくるはずだった。
社会的共通資本
公的な病院を「赤字経営だから潰してしまえ」というのは実に危険な考えである。
新自由主義経済では市場と効率を第一に考えるため、収益のないものは存在してはいけない。
しかし、地域の住民はそういう経済だけで生きているわけではない。
だからこそ公的機関や病院、公共交通機関などがあり、それらは収益を上げることだけを目的にしているのではない。
新自由主義を極端に進めれば、大都市だけに人が住んで、あとは野原だと最も効率がいい。
夕張市が破綻した際、当時の市長は「住宅が分散しているためゴミ清掃、学校など無駄な支出が多い。移動して集中させたい。」と発言したが、これだと市は助かるが住民の暮らしは死んでしまうことになる。
何のためにその場所で暮らしているのかが見出せなくなってしまう。
議事録は必ず作るべき
コロナ対策では政府の専門家会議ができたが、議事録を作っていなかったことが明らかになった。
記録を残す努力は、たとえ金がかかってもやっておく必要がある。
公文書を作ることで、自分の発言に責任感が生まれる。
2009年に新型インフルエンザが流行して大騒ぎしたが、そのときの記録が実はちゃんと残っていない。